村上龍を何冊か読んでみました。最近のテーマは「自立」のようです。
まず多いのは、自立というのは望みさえすればそれはすぐに可能になる、という誤解だ。
(恋愛の格差 p.200)
自立には、自分が置かれている状況が影響する。あなたが親密性のある共同体に所属している場合と、移民や亡命者として外国にいる場合とでは自立の概念や条件が大きく変わるが、いずれにしろ自立には仕事・職業が関係している。恋愛の格差 p.202
今どきの、資本主義的な社会では、経済的な自立なしに自立は成り立たないようです。じゃあ、ギャラがよければいいのかというと、そうでもないわけです。いきなり倒産したり、解雇されたり、大地震で出世とか悩んでる場合じゃなくなったり、というリスクが常にある。価値あるものを手に入れるためには、価値あるものを与えないといけない。強盗とかを除いて。
誰もが個人主義になってしまって公共性が無視される傾向にある、みたいなことがよく言われているようだ。だがそういう場合の個人主義というのはたかだか「嗜好」と「公共性無視」の問題であることが多い。ウーロン茶より緑茶がいいとか、[...] 煙草の投げ捨てが多いとか、たいていそういったことだ。個人主義とは何の関係もない。
(誰にでもできる恋愛 p.75)
個性とかいう言葉も、同じような使いかたをされがちです。とか言いつつ、私も大昔は自分に個性があるという確信、または個性があるのではないかという期待を胸に秘めていました。あー恥ずかしい。
そんなにひどく殴られて、どうして逃げないんだって。忘れてはいけないのは、そこ彼女の家だということです。その家以外での生活をイメージするのは簡単じゃないですよ。
(最後の家族 p.299)
これは、会社にしがみつく (私のような) サラリーマンにも言えるかも知れません。新しい雇用者がいると仮定しても、初めて働き始めた今の職場を離れることは、少しイメージしにくい。誰か他の人が働いている様子を見ると、イメージが湧くかもしれません。