2011-05-28

メタ認知のヒント: Andy Hunt 「リファクタリング・ウェットウェア - 達人プログラマーの思考法と学習法」

転職するときに、以前の職場の上司からもらった本です。当時はピンとこなかったけれど、今読み直すと理解できるようになりました。同時に、この1年何をしてたんだという後悔も。まあ、後悔は毎日のようにしているので、慣れっこです。なんで、もう一度念入りにおしりを拭かなかったのだろう、とか。

格言とは、その状況に応じて臨機応変に解釈が可能な基本的な 原理・原則です。 (p.11)

レシピと格言とは異なるのもなのですが、混同されていることがあると思います。この本でも、疑わしければユニットテストしろ、というのをレシピと取るか、格言と取るかで、具体的な行動や判断基準が変わってくるとあります。

プロジェクトの終わる瞬間が知力のビークであり、開始時点ではもっとも低いということです。これでも、早い段階で決断を下すのが賢明な判断だと思えますか? (p.113)
アジャイルなソフトウェア開発は不確実な状態での作業を許容する方法論です。 最初のうちはプロジェクトの最終日が本当はいつになるのかわかりません。次の反復でどの機能が採用されているかは100%確実にはわかりません。反復が何回あるのかわかりません。でもそれでまったく問題ないのです。その不確実性に浸る心地よさを味わえるようになればよいのです。進んでゆく過程で徐々に答えが見つかり、最後にはすべての答えが出ています。 (p.114)

時間がたつほうが判断が正しくなり、時間が早いほうが残り時間が多くなります。そのトレードオフであると考えるといいのかも知れません。ういうモデルでプロジェクトを考えてみると、「アジャイルと規律」なんかで言われていることと一致するのかも。

最低限の時間を定期的に投資すると決めてしまうのです。[...] その時問すべてが等しく生産的になるとは限りませんが、定間的に予定に組み込むことで、長い目で見るとうまくいくでしょう。 (p.151)

長い目でみるとうまくいく、っていうのは、安心と自信を与えてくれる。おそれずにやっていこう。

しかし「最初からうまくいく」ことが大切なのでは なく、「最終的にうまくいった」ということが重要なのです。 (p.184)

これは斬新。いままで失敗は悪だと思い込んでいた。最終的にうまくいく過程で、失敗できるようリスクを最小化すればよいのだ。一発成功を狙うほうがはるかにリスクが高い。

と、まあ、Andy Hunt が書いているということもあって、最終的にはアジャイルな話になってきました。それでも、長期的な学習や、そのメタ認知の視点のヒントがありました。実践してうまくいったらものがあれば、また、どこかで書きます。

村上龍 / ラッフルズホテル

本棚を整理していたら、村上龍の「ラッフルズホテル」なる小説が出てきました。あーこれ読んでなかったわーと思って、読んでみたら、読んだことある本だった。後半まで気づきませんでした。

2011-05-21

危機が起こったときに備える - エドワード・ヨードン 「デスマーチ第2版」

デスマーチが起こってから、どう対処するか、を、主にマネージャの視点から書かれています。デスマーチが起こることが前提になっているのが、他のマネジメント本と違うところです。プロジェクトマネジメントは計画段階でかくあるべし、と正論を言われても、「いや、もう、プロジェクトはじまっちゃってるし!」ってなりますからね。

しかし、我々が憤れ親しんでき たプロセスに新たにプロセスを追加したり、プロセスを改訂したりする必 要がある新技術を導人するのはずっと難しい。 (p.244)

そうなんだよなぁ。慣れたところから、慣れないところに行くときは、いつもそういうことが起こる。最初から、新しい方法だったらまったく問題は起こらないのに。

納期に遅れたり、予算を大幅に超過したり、プログラマを燃え尽きさせてしまうプロジェクト・マネ ジャーに、プロジェクトを次々と「破滅」させる機会を与えてはどうか?要するに、なぜ、プロジェクト・マネジャーもメンバーも、実際の経験に 備えてデスマーチ・プロジェクトの経験をシミュレートしようとしないの か? (p.252)

デスマーチの練習、っていいなぁ。デスマーチを避けることは大事なんだけど、現実にそれに近い状態が起きるのであれば、それに備えることは意味のあることであるなぁと思いました。爆弾処理班とか、テロ対策特殊部隊とかって、そういう人たちだもんなぁ、などとも。

# 別に火消しになりたいわけでも、管理に意味が無いと主張しているわけでもありません、念のため。

2011-05-15

Venkat Subramaniam and Andy Hunt / アジャイルプラクティス

Venkat Subramaniam と Andy Hunt による「アジャイルプラクティス」を読みました。翻訳には角谷氏が入っています。アジャイル厨としては読んでおなねばならないでしょう。

まずは、一日という単位で考えてみよう。できることなら、日々の仕事はそれなりに見通しの立った状態で終わりを迎えたい。大きな懸案事項を積み残して、もやもやした気持ちを抱えたままでは終えたくないものだ。 (p.41)

未来予想は相変わらず下手っぴなので、こういうところからスタートだなぁと思います。予想外の割り込みがあったりして、うまくいかないんだけど、練習して少しずつ、確度と精度をあげていかないと、と思います。1日の予想ができなければ、1週間、1ヶ月の予想はできない。

小さな問題には小さなうちに対処しよう。未知の課題は深入りする前によく調べよう。過ちに気づいたらすぐに、素直にそれを認めよう。 (p.4)

ここがよく分かりません。気づいたら対処するべきだけど、最初のころには小さな未知の問題がたくさんある。それらを潰してからだと、ひとつめのイテレーションが始まらない。難しいものです。

「オーケー。で、私か力になれ ることはある?」そう、彼らはくよくよ考える代わりに、努力をその問題の解決に向ける。なぜそうするのかは明らかだ。成果をあげることこそが重要だからだ。 (p.13)

「うへぇ」って思うことってあるけれど、うへぇって思っても解決しない、のと同じだ。解決するしかない。解決に関与しない思考や行動は無駄でしかない。んだけどね、まあ、つい、びびってしまって、自分の感情や驚きを優先的に外に出して(「うお!」とつぶやいてしまうなど)しまいます。気をつけたいものです。


2011-05-06

台北に行ってきました

台湾の台北に、数日行ってきました。現実からの逃避が目的だったので、食べて歩いて寝てました。台湾を選んだ理由も、近くて比較的親日的であるという(噂がある)程度の理由です。台湾のことは HTC とか Acer とか Giant とかのメーカーがある、天気予報がすごいことになっている、程度のことしか知りません。

ところで、島田紳助が「大阪はアジアや」みたいなことを、どこかで言っていたと思いますが、まあ、そんなところですよ大阪は。特に、通天閣界隈とか。前回行ったとき、地下鉄駅から地上が上がったところで、アヒルが歩いていました。

で、台湾の地下鉄(丸の内線のような、地下と地上を走る路線)の駅で、ふと頭上の案内板を見ると...



新世界! 上がってみてもアヒルはいませんでした。

新しく鉄道を敷いている国の多くがそうであるように、この路線も RFID を使った改札です。つまり、SUICA、PASMO、toica、ICOCA、PiTaPa みたいなの。そんなの持っていないので、切符を買うわけですが、これが紙ではなくて、プラスチックのコインの中に RFID が埋め込んであるトークンです。



近未来!

技術的にはそんなに難しくないはずです。定期区間/期間を記載できる SUICA 定期や、自動的にクレジットカードからチャージする View SUICA のほうが、すごそうです。

でも RFID トークン便利な気がするんですよねぇ。再利用するからゴミもほとんど出ないし、輸送もほとんどしなくていいし、メカも少ないから故障も電力消費も少ないでしょうし。接触感染の伝染病とか流行るとやばい気がしますが、つり革とかエスカレータのベルトでも同じですしね。

民主化にともなって、経済発展が加速したのは、李登輝が総統になってからでしょうから(間違ってたらごめんなさい)、大した時間は経っていないはずなんですよねぇ。すごいなぁ、スマホ率も高くて使いこなしてるしなぁ、都市部ではとくに不便なこともないしなぁ、技術自体よりもそれを生活にデプロイするのが上手なのかなぁ、などと若干悶々としながら帰国。

で、羽田空港でバスのチケット窓口で見た光景です。2人分のチケットを買った人に対して、880円のお釣りがありました。そのとき窓口の人は「頼まれもしないのに、わざわざ」100円玉と10円玉を、それぞれ8枚ずつ出したのです。おつりを割り勘できるように、です。

細かい心遣いですね。すばらしいですね。やっぱり日本ですね。

と言いたいのですが、これって、なんか余計なお世話だし、コストであるなぁとも思いました。いや、便利ですよ。割り勘大事ですよ。でも、ただの妄想ですけど、こういう細かいことって、つり銭以外にいっぱいあるんじゃないですかね。それがコスト高の要因になり、それが利益率の低さにつながり、GDB の低さになるんじゃないのかなぁ、と。えらく大きな話に持っていってますけど。

個人的には、エンジニアリングというのは、価値創造や価値伝搬の効率を上げるための手段だと考えているんですね。で、なんというか、こう、効率を上げることにもっと自分の時間を使いたいなぁと思いました。なんか、アホな子どもが教師や親に褒められたいがために書いた文章みたいな展開になっていしまいました。が、思ってしまったんだからしょうがない。

あ、そうそう、台北ではおいしいビールにありつけませんでした。きっと、どっかにあるに違いないので、また行ってみたいです。