2007-08-20

村上龍 / ラブ&ポップ

大切だと思ったことが、寝て起きてテレビを見てラジオを聞いて雑誌をめくって誰かと話をしているうちに本当に簡単に消えてします。(p.57)



大切だと感じたものはすぐに手に入れるか経験するかしないと、一晩か二晩で平凡なものに変質してしまう。(p.59)



やりたいことや欲しいものは、そう思ったその時に始めたり手に入れようと努力しないと必ずいつの間にか自分から消えてなくなる。(p.90)

このような文が、この小説には何度も登場します。そして、ある意味それは真だとも思います。何かを手に入れる手段というのが限られていて、その手段が援助交際というのは理解できます(良い、というわけではなく)。



指輪なんて、どうでもいいように思えますが、そうはいきません。私が「Mac が欲しくて定期預金を解約する」のも基本的には似たようなことだと思います。リスクをおかして、不必要なものを入手するわけです。ただ、援助交際はリスクが大きい(ように思える)ですね。この小説は、そういうところを表現できていると思います。主人公が、やるぞ、と決め手からの後半が、手に汗握る展開です。



ラブ&ポップ―トパーズ〈2〉